オンライン大学チョークレス
'01-11-6-Tue.


実験編

SDS-PAGE
(SDS polyaclylamide gel electophoresis)






概略
材料
手順

A. 概略

電気泳動は、電気の力で生体物質、たとえば DNA やタンパク質、を分けるのに 非常によく使われる操作で、普通、DNA の分画にはアガロースゲル電気泳動、 タンパク質の分画には SDS-PAGE を用いる。(言いかえると、DNA やタンパク質は 電荷をもっている、ということである)

SDS-PAGE(SDS-polyaclylamidegel electrophoresis, SDSアクリルアミドゲル 電気泳動)は、アクリルアミドとN,N'-メチレンビスアクリルアミドの 混合溶液(構造式は後述)を重合させることで、分子ふるいをつくり、その目の 大きさによって分子をよりわける。泳動をする試料の方は、タンパク質なわけだが、 これはアミノ酸がつながったものである。アミノ酸は、側鎖によってもつ 電荷が大きく異なる。しかし、β-ME をいれて 還元状態にしたり、サンプルを煮てタンパク質の高次構造をほどいた上に、 SDS (sodium dodecyl sulfate: ドデシル硫酸ナトリウム, ラウリル硫酸ナトリウム) が それにくっつくことで、分子量(=アミノ酸鎖の長さ)と対応する負電荷が 与えられ、どのタンパク質もほぼ分子量によって分画される。

ゲルにサンプルをのせて泳動をすると、そのままでは、サンプルの幅が残ってしまい、 できあがったバンドが大きな幅を持ってしまう。そこで、ゲルは2層構造になっていて、 サンプルは stacking gel(濃縮ゲル)を通って濃縮されたのち、separate gel (分離ゲル)を通って分画されるしくみになっている。separeate gel は running gel とも呼ばれる。

SDS-PAGE では、主に 10kDa から 70kDa のタンパク質を分画する。これはだいぶ幅が ある数字だが、アクリルアミドの量を調節することで、目的の大きさで分解能が 高くなるように調節ができる。具体的には 7.5% から 15% までアクリルアミドの 量を調節することでそれを実現する。


電気泳動をしただけでは、タンパク質はバンドとして検出できない。何らかの方法で 染色をすることにより、タンパク質をバンドとして検出する。

主な染色法は3つ。CBB染色、銀染色、Western Blottingである。

CBB (Coomasie Brilliant Blue) は、群青色の液体で(有機化学を知っている人なら 分かると思うが)、巨大な共役系になっているので、色がついている。 CBB は、タンパク質に非共有結合をする(多分、イオン結合だろう)。そのため、 泳動後のゲルをこの溶液につけると、タンパク質に CBB が結合して、脱色後に タンパク質の部分がバンドとして検出できる。 下の写真は、アフリカツメガエルの血液と精子のタンパク質を泳動したもので、 左から調製赤血球・血液濃度1倍、1/3倍、1/9倍、1/27倍、赤血球サンプル、 分子量マーカー、精子サンプル、調製精子・濃度1倍、1/3倍、1/9倍、1/27倍、空きと なっている。 精子1/9のはっきりしたバンドは、謎のバンド(笑)。


SDS-PAGE CBB

銀染色は、色素自体がタンパク質に結合するCBB染色とは違い、タンパク質に結合した 銀イオンを還元させることで、発色をさせる(だから、還元させないと発色は しない)。ジアンミン銀(I)イオン [Ag2(NH3)2]+ や、 ビスチオスルファト銀(I)イオン [Ag(S2O3)2]3- の形で銀イオンは タンパク質と結合し、それをホルムアルデヒドで還元することで、Ag を析出させ、 褐色に着色する。

Western Blotting は、SDS-PAGE後のゲルを電気をかけることでメンブレンに転写して、 抗体を使ってタンパク質をマークし、その抗体への抗体(二次抗体)をかけたあとで、 多くは AP (alkaline phosphatase) によって発色するものである。これは目的の タンパク質に対する抗体を用いることで、特異的にタンパク質を検出することが できる。

B.材料

  1. dH2O

    いわゆるイオン交換水。MilliQではいけない、という人がいるが、 別に気にすることはない、と私は思う。

  2. Stacking Buffer [1.5M Tris/HCl (pH8.8)]

    1.5M Tris溶液をHClでpHを8.8に合わせたもの。Trisの分子量は121.14である。 念のため。

  3. Separate Buffer [0.5M Tris/HCl (pH6.8)]
  4. 10% SDS (sodium dodecylsulfate:ドデシル硫酸ナトリウム,ラウリル硫酸ナトリウム)
  5. アクリルアミド・N,N'-メチレンビスアクリルアミド混合溶液(24:1)
    acrylamide N,N'-methylenebisacrylamide
  6. APS (Ammonium peroxodisulfate ; Ammonium persulfate : 過硫酸アンモニウム) (NH4)2S2O8)

    ゲルの重合はラジカル反応で進む。そのラジカルを与えるのがこれ。

  7. TEMED (N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine: N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)

    TEMED

    テメドと読む。重合開始剤。


C. 手順

a. ゲル立て

ATTO AE-6500

ATTO AE-6500 というのを使っています。これについて説明しますが、 だいたいは変わらないです。


一般的な方法(所要時間:40分+待ち時間20分)
  1. 器具の名称
    ゲル板 耳つきゲル板
    ゲル板耳つきゲル板
    gasket comb crip
    ガスケットコームクリップ

    耳つきの耳とはスペーサーのこと。耳がないとゲルの入る余地がない(笑)。 このガラス板は耳つき切り欠きあり、っていう感じである。

  2. 耳つきゲル板にガスケットをセットする ゲル板にガスケットをセットする

    あたりまえですが、ゲル板がきれいかチェックしておきましょう。 ゲル板の下端とガスケットの下端を合わせるようにセットする。ガスケットの 下のラインが直線状になるように(このラインがゲルのラインとなる)。 横はそれなりでよい。ガスケットに表裏がある気もするが、あまり気にしない。 (というか、だいたいやればわかる)

  3. 静かに対のガラス板をのせる。

    もし仮に、ぴたっと合わないなら下端を合わせる。

  4. そのままずれないようにして、両サイドをクリップでとめる。 ゲル板のセッティング

    この状態で立てられるようにしておくと、後が楽。

  5. ゲル板の準備

    試しにコームをさしてみる。妙にきついとかゆるいときは、何か原因がないか チェック。コームの下端から5mmほど下にマジックで印をつけておく。 この印が、separate gelとstacking gelの境目である。この界面は重要なので 印は、点をうつだけにとどめ、ゲル板いっぱいに線をひかない。 チェックが終わったら、コームは抜いておく。

  6. 試薬を調製する。(APSとTEMEDはまだ入れない)
    薬品名separate gelstacking gel
    ddH2O適宜3ml
    separate buf.7.5ml-
    stacking buf.-1.5ml
    SDS
    acrylamide soln.7.5%-15% 700 µl
    APS25 µl 10 µl
    TEMED 15 µl 10 µl
    total20ml10ml

    具体的には次のとおり

    薬品名 separate gelstacking
    gel
    7.5%10%12.5%15%
    ddH2O
    separate buf. -
    stacking buf. - - - -
    acrylamide soln. 700 µl
    APS
    TEMED
    total

    ともに2枚分の容量である。 APSとTEMED以外を先に混ぜる。いれると、固まり始めるので注意。 スターラーで泡立たない程度に混ぜる。それは、空気がアクリルアミドの重合を 阻害するからである。人によって脱気をするが、別にしなくても支障はない。 その後、APSを入れて混ぜ、むらがなくなったらTEMEDを入れ混ぜる。

  7. separate gelの液にAPSとTEMEDを入れ、ゲル板に注ぐ

    とりあえず、気にせず注ぐ。さきほどつけた印まで。 界面に泡できても気にしないでよい。注いだ液は(別の容器に移しても いいのでとっておく)

  8. 静かに水飽和ブタノールを重層する

    激しくやると界面が乱れる。不安ならピペットなどを使うのがよい。 (試薬瓶から液を取るだろうので、ピペットを使うのはまぁ、当然)

  9. 20分静置
  10. ゲルが固まったのを確認して、水飽和ブタノールを捨てる

    さきほどとってあった液が固まっていれば平気である。注いだゲルを見ても 固まったかどうかは判断できる。ガスケットとの境目や、液面に、固まっている 層と固まらない層ができる。

  11. 水を注いで、ブタノールを洗う。最後にイオン交換水でリンス。
  12. stacking gelの液にAPSとTEMEDを入れ、ゲル板の切りこみのところまで注ぐ。 コームをさす。

    切りこみはガラスが斜めにカットしてあるが、その下まで注ぐとよい。 コームは泡を追い出しながら、斜めにさしていく。

  13. 水飽和ブタノールを表面にのせる

    空気が入ると重合が阻害されるからである。

  14. 20分待つ。→ 泳動 or 保存


自己流アレンジ(所要時間:20分+待ち時間20分)

最大の特徴は、separate gelの液にglycerolを混ぜることによって重量差を作り、 separate gelが固まる前にstacking gelの液を流しこめるため、時間が従来の 半分近くになった点である。

  1. 試薬の組成(他は一般的な方法と同じ)
    sep. buf.1.5M Tris/HCl (pH 8.8)
    10% SDS 40ml/1l buf.
    stack. buf.1M Tris/HCl (pH 6.8)
    10% SDS 40ml/1l buf.
    APS40%に調製

    stack. gel のTris/HClは1Mにする意味がよくわからないんで、普通の 0.5Mでいいと思う。(っちゅうか、多分、書き間違い)

  2. 耳つきゲル板にガスケットをセットする
  3. 静かに対のガラス板をのせる。
  4. そのままずれないようにして、両サイドをクリップでとめる。
  5. コームをさして、ゆるさ/きつさのチェック→外す

    ゲル板にゲルの境目の印をつけなくてよい(理由は後述)

  6. 試薬を調製する。(APSとTEMEDはまだ入れない)
    薬品名separate gelstacking gel
    ddH2O適宜3.8 ml
    separate buf.4.5 ml-
    stacking buf.-1.5 ml
    glycerol1.5 ml -
    acrylamide soln.7.5%-15% 700 µl
    APS25 µl 10 µl
    TEMED 15 µl 10 µl
    total18 ml6 ml

    具体的には次のとおり

    薬品名 separate gelstacking
    gel
    7.5%10%12.5%15%
    ddH2O 7.5 ml6 ml4.5 ml 3 ml3.8 ml
    separate buf. 4.5 ml 4.5 ml 4.5 ml 4.5 ml -
    stacking buf. - - - - 1.5 ml
    acrylamide soln. 4.5 ml6 ml7.5 ml9 ml 700 µl
    glycerol 1.5 ml 1.5 ml 1.5 ml 1.5 ml -
    40% APS 25 µl 25 µl 25 µl 25 µl 10 µl
    TEMED 15 µl 15 µl 15 µl 15 µl 10 µl
    total 18 ml18 ml18 ml18 ml 6 ml

    ともに2枚分の容量である。

  7. separate gelの液にAPSとTEMEDを入れ、ゲル板に注ぐ 3レーン分あてながら注ぐ

    さきほど、どこまで入れるかの印はつけなくてよい、と書いたのだが、 印をつける、「コームから下 5mm」は「切り欠きからwell 3つ分」である。 だから、片手で3レーン分になるようにコームをあてつつ、もう片方で注ぐ。 写真で、コームの下端までゲルを注げばいいわけだ。

  8. stacking gelの液にAPSとTEMEDを入れ、ゲル板に注ぐ

    私は不精なので、ピペットは使わずに、ビーカーから直接 注ぎます。 その際、普通に注ぎ始めると表面張力でなかなか注がれず、あげくに どばっと入って、界面が乱れたかとひやひやするので、最初にペーパータオルに たらしてから少しずつ注ぎ始めます。

  9. コームをさす。

    切りこみはガラスが斜めにカットしてあるが、その下まで注ぐとよい。 コームは泡を追い出しながら、斜めにさしていく。

  10. 20分待つ。→ 泳動 or 保存





実際の泳動であるが、泳動装置に泳動バッファ(Tris,Gly,SDS)をセッティングした後、 ゲル板のクリップとガスケットを抜き取って、泳動装置にセットする。1つの泳動層に 2つのゲル板をセットできる。泳動装置の上槽にバッファをたし、静かにコームを抜く。 ウェルにサンプルをアプライして、ふたをして泳動を開始する。30mAで60分程度で ある。

泳動が終わったら、ゲル板を泳動装置から外し、ゲル板とゲルを分ける。ゲルを、 染色液につけて、振盪しながら染色する。染色の方法でもっともポピュラーなものが、 CCB(Coomasie Brilliant Blue) である。

CBB


  


   ただいま更新中です。とりあえず公開しておきます。
学生実験のレポートなどで必要な人がいると思いますが、 直接メールで質問など書いてください。親身に(?)答えますから。
うちの研究室の実験へのレポートのヒント:
よぉーっく実験書を読みましょう。それから 他の研究室のところもめくってみましょう。CBBの構造式も載っています。

takeru@246.ne.jp(home)
tnakazat@bio.titech.ac.jp(Lab.)

参考資料

バイオ実験イラストレイテッド 5 タンパクなんてこわくない 細胞工学別冊 秀潤社 \3,400- + 税

バイオ系プロトコル集の書籍でSDS-PAGEの巻。究めたい人にとっては だいぶ参考になる。毎度おなじみ細胞工学という雑誌の別冊扱いで、 だから、私の大学の図書館では普通の書籍の棚ではなくて、 雑誌のところ[細胞工学の隣の棚]にあったりする。


  つづく


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担当: てくら%なかざと
e-mail: < takeru@246.ne.jp >
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